機能性が高く、山でも街でも着られるアウトドアウェア 。機能的な服がオシャレになってきた為、近年かなりの人気となっている。
「どこのブランドを買えばいいの?」
「どの素材の物を買えばいいの?」

好きなデザイン、共感出来るブランド、快適な素材の物を納得して手に入れて欲しい。
まず皆様に知ってほしいのは、

アウトドアウェアの歴史=登山の歴史

歴史を紐解くと、登山とアウトドアウェアは面白い程つながっています。登山の歴史と共に紐解いていきます。

INDEX

登山とアウトドアウェア
歴史

人類が自然と戦った記録
果てなき追究の歴史

人類が身体を鍛え、頭を使って追究し、挑んだ歴史こそが登山の歴史だ。

その中で、身につける服を工夫し、それを街の普段着に応用したのが「アウトドアウェア」。
便利で機能性が高い「登山着」を着るうえで、人々がどんな挑戦をしてきたか?知る必要があるのではないだろうか。

↓アウトドアブランド一覧はこちらの記事

近代登山とアウトドアブランドの始まり

近代登山の始まりは、18世紀後半にヨーロッパを中心に始まる。

1760年、ある自然科学者が、モンブラン初登頂を成し遂げた者に賞金を出すと宣言し、それに応える形で1786年にミシェル・パカールとジャック・パルマが登頂に成功する。

その後、アルプス登山が盛んになり、多くの人がどんどん大きな山に登るようになる。

ヨーロッパでは、クライミングギアを製作するブランドが立ち上がる。
今でも続く|MAMMUT マムート ||HAGLOFS ホグロフス||MILLET ミレー|なども1900年前後に創業している。

近代登山は「スポーツとしての登山」の毛色が強く、ヨーロッパのアウトドアブランドは登山家向きの本格派ブランドが多い。配色も落ちつており、高品質の商品が多い事が特徴

ロッククライミングとヒッピーが起源?
カリフォルニア州出身の最重要ブランド達

1960年代以降にアウトドアブランドが多く生まれる。このブランドたちに影響を与えた事がらは2つある。

ロッククライミングヒッピーだ。

1953年に世界最高峰エベレストがイギリスの遠征隊が登頂する。
世界から未踏峰の山が無くなり、登り方に注目を集めるようになる。
そういった中、手段のひとつだった「ロッククライミング」が人気を博す。
巨大な岩壁があるカリフォルニア州のヨセミテ国立公園に、世界中からロッククライマーが集まる事となった。

1960年代、アメリカは「ヒッピー」最盛期。
今までの登山は登山家のものだったが、一般人も登山をするようになる。

そもそもヒッピーとは何か?

アメリカで既存の道徳観や生活様式に反抗し,ひげや長髪をたくわえ,ジーンズや風変りな衣装を身につけ,ドラッグやサイケデリックなロック音楽,東洋的な瞑想を好み,定職につくことを拒否して放浪した人々を指す

平凡社 世界大百科事典

彼らは、既存の社会に反抗し自然に回帰するために登山をするようになる。

そもそもヒッピーの教祖と呼ばれる「メリー・プランクスターズ」が拠点にしていたこともあり、カリフォルニア州がメッカとされる事が多い。

このふたつのムーブメントを受けて、カリフォルニア州に多くのアウトドアブランドが生まれる事となる。

この時に、|patagonia||THE NORTH FACE||SIERRA DESIGNS|等の最重要ブランドが産声を上げる。

この3ブランド、実は関係がとても深い。

1965年に、patagoniaの創業者イヴォン・シュイナードがクライミングギアメーカー「シュイナード・イクイップメント」設立。

ジョージ・マークスとボブ・スワンソンの二人でアウトドア用品メーカー「シェラデザインズ」をを創業。

1966年に、ダグラス・トンプキンスがマウンテンギア用品店「ザ・ノース・フェイス」をオープン。

シェラデザインズの最初の契約先がノースフェイスだったとか。また、不朽の名作「シェラパーカ」もシェラデザインズが作成したものだともいう話も。

「シェラパーカ」の後継「キャンプシェラ」。アウトドア用ダウンパーカの原型とも言われている。

また、イヴォン・シュイナードと、ダグラス・トンプキンスは創業時からの付き合い。

そして、1968年にダグラスはお店を譲り、イヴォンを含む仲間達と半年にもおよぶ旅に出る。

その旅の地が、後のブランド名に影響を与えるパタゴニアがある南米だった。

ダグラスは、帰国後スージー夫人とともに|ESPRIT エスプリ|を創業し、後に環境活動家としてパタゴニアの地に戻ってくる。

左がダグラス・トンプキンス、右がイヴォン・シュイナード。
ダグラスは、環境保護活動を熱心に行っており、パタゴニア地方で過ごしていた。2015年にカヤック事故により死去する。

この3ブランドが関係が深い事もさることながら、その他のアウトドアブランドに与えた影響も大きい。

SIERRA DESIGNSは、マウンテンパーカや60/40クロスなどの機能的生地を開発。

patagoniaは、フリースなどの新しい生地を開発する。さらに、再生素材やオーガニック原料を使う事で、SDGsへ意識が色々なブランドの手本とされる。

THE NORTH FACEは、高品質のプロダクトは勿論。独自のマーケティングで一躍トップブランドに。

このような彼らの活動と彼らに影響を受けた人たちが増えた結果、アウトドアブランドを人気カテゴリに押し上げる。

また、ヒッピー文化からの後押しもあり、この時期に生まれたブランドのメインターゲットは一般層が多い。配色が派手で「登山(自然)を楽しむ」といった趣向が反映されたデザインの商品が多い事が特徴

登山と高機能生地開発の歴史

登山の服装はレイヤリング(重ね着)という基本の考え方がある。
肌着的な役割である「ベースレイヤー」。一番外に着る「アウターレイヤー」。間に着る「ミドルレイヤー」。
もちろん役割が違う為、各々で高機能素材が生まれる。 一番最初に革新的発明がされたのがアウターレイヤーだ。

1969年に延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)が誕生。 この素材は、|GORE-TEX ゴアテックス |が開発した「GORE-TEX メンブレン」と呼ばれ、現在でも世界最高水準の防水透湿性素材を誇る。

ゴアテックスは、1985年に品質保証の「GUARANTEED TO KEEP YOU DRY®」プロミスを導入。テキスタイル(生地)メーカーがアパレルメーカーの商品に対して審査を行うという、なんとも珍しい。
それでもほぼ全てのアウトドアブランドの最高峰ラインのアウターで使用されており、その品質の高さは折り紙付きだ。

ミドルレイヤーでの革新的開発は、フリースとソフトシェル。
1981年には、|patagonia パタゴニア|と|Polartec ポーラーテック|が「シンチラ・フリース」を共同開発。 1985年にパタゴニアの人気商品「スナップT」を発売し、フリースがアウトドアフリークのインナー定番着となる。

1984年に、|MAMMUT マムート|と|Schoeller ショーラー|がソフトシェルを開発。 ゴアテックスの生地が「ハードシェル」と言われるが、それと対比した「ソフトシェル」を開発。
ソフトシェルとはストレッチ性のあるソフトな素材を採用した、防風性・吸湿性・通気性・撥水性に優れた生地のこと。

登山とアウトドアウェア
年表

人類が自然と戦った記録
果てなき追究の軌跡

'1786

モンブラン
初登頂

1760年にオラス・ド・ソシュールがモンブラン登頂に懸賞金をかける。
1785年にソシュール自身で挑戦するも断念。
その翌年にミシェル・パカールとジャック・パルマが頭頂に成功。
そのさらに翌年にソシュールも頭頂に成功し、その後多くの山を登破。
ここから近代登山が始まり、ソシュールは「近代登山の父」とされる。

'1854

ヴェッターホルン
初登頂

1844年以降すでに多くの人が登頂に成功していたが、
ガイドが報酬目的で「未踏峰」という事にする事が多かった。
アルフレッド・ウィルスが登った1854年が有名となり記録に残った。
これ以降、アルプス黄金時代と呼ばれるようになる。

'1862

|MAMMUT|
創業

カスパー・タナーが、スイス・ディンティコンにてロープ工場を設立。
当時は農業用ロープを開発しており、アウトドア用品は扱っていなかった。
1940年に、|MAMMUT|として登山用ロープを販売し始める。

'1865

マッターホルン
初登頂

エドワード・ウィンパーがマッターホルンを初登頂。
これにより4000m級の未踏峰が無くなり、アルプス黄金時代は終焉。
これらよりやや低い峰や、新ルートで登るアルプス銀の時代に入る。
新ルートは岩場などが多く、登攀用具を駆使する人工登攀の時代へ繋がる。

'1877

|HELLY HANSEN|
創業

商船艦長を務めていたヘリー・ジュエル・ハンセンが創業。
当時の船乗りを苦しめた雨や風を防ぐ、しなやかな防水ウェアを発明。
|HELLY HANSEN|がアウトドアブランド入りするのは2011年以降。

'1914

|HAGLOFS|
創業

ヴィクトル・ホグロフがスウェーデンで|HAGLOFS|を創業。
バックパックの製作をしており、農家や林業労働者、学生などに販売。

'1921

エベレスト
第1次遠征隊実行

1893年から構想されていた世界最高峰エベレストへの遠征隊が組織。
第一次遠征隊は、登頂のための周辺調査とルート確認を目的として実行。

|MILLET|
創業

マルク・ミレー夫妻により、フランスのサン・フォンにて創業。

'1938

|COLUMBIA|
創業

ドイツでシャツの縫製工場を経営していたポール・ラムフロムは、
家族と共にドイツからアメリカのオレゴン州へ移住。
帽子問屋を買収し、「コロンビアハットカンパニー」を創業。

'1953

エベレスト
初登頂

イギリス隊のエドモンド・ヒラリーとテンジン・ノルゲイが初登頂。
構想から60年経っての達成に世界中が驚いた。
これ以降、山を登る手段だったロッククライミングが隆盛する。

'1961

「ファイバーパイル™」
開発

|HELLY HANSEN|が「ファイバーパイル™」を開発。
これがのちのフリースの祖先と言われる

'1965

「シュイナード・イクイップメント」
創業

イヴォン・シュイナードは趣味の登山と登山用品の製作を行っており、
1965年に登山用品メーカー「シュイナード・イクイップメント」設立。
「シンプリシティ(単純性)」を追求する事を指針に登山用品の改良を行う。

|SIERRA DESIGNS|
創業

ジョージ・マークスとボブ・スワンソンがカリフォルニアで開業。
わずかな資金で、最初はバックパッキング用品を製造していた。

'1966

「THE NORTH FACE」
オープン

ダグラス・トンプキンスは登山用品店としてオープン。
1965年に創業した|SIERRA DESIGNS|初契約先だったとも。
名作「シェラ・パーカー」もシェラデザインズが作成したものという話も。

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'1968

「60/40クロス」
開発

|SIERRA DESIGNS|が、「60/40クロス」を開発。
高機能素材の走りとされ、その生地を使った「マウンテンパーカ」も発売。

'1972

|patagonia|
スタート

販売が増えてきた為、ウェア専門として|patagonia|がスタート。
ブランド名の由来は、南米アルゼンチン・パタゴニア地方から。

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'1975

|mont-bell|
創業

辰野勇が|mont-bell|を真崎文明と増尾幸子と共に設立。
辰野は、アイガー北壁日本人第二登を果たしたトップクライマー。

'1976

|GORE-TEX|
製品化

|GORE-TEX|が、1969年に発見したePTFEを初の製品化。

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'1978

「オーロンフリース」
製品化

日本初のフリースを発売し、日本の登山界に衝撃を与える。
「化学繊維のモンベル」と呼ばれるきっかけとなる。

'1982

|GRAMICCI|
創業

|GRAMICCI|創業時から「グラミチパンツ」を販売し、
クライミングパンツの原点とされる。

'1984

|MAMMUT|
ソフトシェル開発

|MAMMUT|と|Schoeller|がソフトシェルを開発。

'1985

「シンチラ・フリース」
開発

|patagonia|は、1977年にパイルジャケットを発売。
毛玉が出来やすい欠点を克服する為、モルデン・ミルズ社と共同研究実施。
1985年に「シンチラ・フリース」が発売される。

ソフトシェル
開発

|MAMMUT|と|Schoeller ショーラー|がソフトシェルを開発。

キャプリーン・ポリエステル
開発

ベースレイヤーに使われていたポリプロピレンは、
洗濯すると縮み、肌触りでチクチクするという短所があった。
|patagonia|
が、その短所を解消する素材を開発。

'1989

|BLACK DIAMOND|
スタート

シュイナード・イクイップメント社をピーター・メトカーフが引き継ぎ、
|BLACK DIAMOND ブラックダイアモンド|として1989年にスタート。

'1991

|ARC’TERYX|
スタート

89年にデイブ・レーンとジェレミー・ガードが「Rock solid」社を設立。
当初からやっていたハーネス以外も製作する為|ARC’TERYX|スタート。

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'1996

オーガニックコットン
採用

|patagonia|は綿素材商品の原料をオーガニックコットンに変更する。

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